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意見表明(1998年-2010年)

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被疑者国選弁護制度の早期実現を求める声明

1998年(平成10年)8月10日
神戸弁護士会 会長 小越 芳保

 憲法は身柄拘束を受けた被疑者に対し、弁護人依頼権を保証している。国は、貧困等により事実上弁護人を依頼できない被疑者に対し、弁護人を付する責務を負っている。しかし、我国においては、被疑者段階での国選制度が存在せず、多くの被疑者が弁護人を依頼しないまま取調べを受けている。

 被疑者の多くは、社会的に孤立し、法律的知識に乏しく、自らの力で適切な防御活動をすることは困難である。特に身柄を拘束された被疑者は、日常生活から遮断され、孤独と不安の中で取調べを受けることになり、肉体的にも精神的にも疲労し、不本意なあるいは虚偽の自白を強要される例が少なくない。

 勿論、被疑者にも憲法上弁護人依頼権が保証されてはいる。しかし、我国ではこれまで、公的な費用で被疑者に弁護人を付す制度がとられてこなかったことから、大部分の被疑者は弁護人を依頼することができない状態が続いてきたのである。

 このような状態に対処するため、1990年(平成2年)以降、全国各地の弁護士会は当番弁護士制度を発足させ、当会においても、1992年(平成4年)から当番弁護士制度を実施してきた。この制度は次第に定着し、社会的にも高い評価を受け、一定の成果を収めてきた。

 当会の運用実績でも、1992年度(平成4年度)の出動回数は224件であったが、1996年度(平成8年度)は758件と3.38倍に達している。しかし、この制度は、我々弁護士が自ら資金を負担し労力を提供して、維持運営されている現状にあり、国費の支出は全く行われていない。このため、この制度は財政的に危殆に瀕しており、一層の充実発展を図るためには、被告人における国選弁護人制度と同様、被疑者段階においても公的費用により弁護人を付する制度を創設することが急務である。

 この要請に応えるため、日本弁護士連合会は、1997年(平成9年)10月、「被疑者国選弁護制度試案」を発表した。この試案は、2000年(平成12年)を目途に関係法規を整備して段階的にこれを実施し、2010年(平成22年)には、身柄拘束を受けた全ての被疑者の請求により国選弁護人を付する制度の実現を目指すものである。

 当会においても、当番弁護士制度の発展充実を図るとともに、上記試案を基礎とした被疑者国選弁護制度の早期実現を強く求めるものである。