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意見表明(1998年-2010年)

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国選弁護人の報酬について

2002年(平成14年)10月7日
兵庫県弁護士会 会長 藤野 亮司

 最高裁判所が定める国選弁護人の報酬の支給基準について、平成13年度に引き続き本年度も増額されないこととなりました。このような2年連続据え置きという結果は、昭和35年以来実に42年振りのことです。加えて、最高裁判所は、平成15年度予算の概算要求においても、増額要求をしておりません。

 わが国の刑事裁判における国選弁護事件の割合が75%を超えようとする状況になっている現在、日本国憲法によって保障された重要な基本的人権である被告人の弁護人依頼権(第37条3項)を実質的に保障するためには、国選弁護が充実することが必要不可欠であるといえます。従って、国選弁護人が十分な弁護活動ができるように適正な報酬が確保されなくてはならず、その費用は、国によって適正な予算が手当されなくてはなりません。

 しかしながら、国選弁護人の報酬は、現在3開廷を基準に地方裁判所で金8万6400円、簡易裁判所で金6万1900円でありますが、国選弁護人の弁護活動にかかる時間・労力等に、十分対応した額とは考えられません。しかも、現在の制度のもとでは記録謄写料、交通費等の実費については一部裁量により認められているに過ぎないことから、事実上弁護人の持ち出しになっております。このような状況下では、国選弁護人は、十分な弁護活動をしようと努力すればするほど、実質的な持ち出しを余儀なくされ、被告人に対する十分な弁護活動を抑制しかねない状況となっております。

 従って、このような状況下での、国選弁護人の報酬の据え置きは、一方的に国選弁護人に負担を強いるものであり、ひいては被告人の弁護人依頼権を侵害するものと言わざるをえません。又、被疑者段階を含め国費による弁護制度が実現されようとしている現在、このような状況を放置することは、被疑者段階における弁護人依頼権をも、実質的に侵害することにつながりかねません。

 そこで、兵庫県弁護士会は、国選弁護人の報酬の支給基準の2年連続の据え置きに抗議するとともに、国選弁護人に対して適正な報酬及び弁護活動に必要な実費全額の支払がなされることを強く要望します。