裁判員裁判実施に関する神戸地裁への要望
兵庫県弁護士会
2009年5月までには実施される裁判員裁判において、裁判員及び訴訟関係者の充実した活動を可能にするため、神戸地方裁判所において、建物の増築により託児所、待合室及び面談室、接見室等の諸設備を整備すること及び、神戸地方裁判所本庁の他に、尼崎、姫路、豊岡の各支部においても、同措置を講じた上で、裁判員裁判を実施するよう要望する。
提案理由
1.裁判員裁判は、2009年5月までには実施されるが、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律附則第3条において、「国は、裁判員の参加する刑事裁判の制度を円滑に運用するためには、国民がより容易に裁判員として裁判に参加することができるようにすることが不可欠であることにかんがみ、そのために必要な環境の整備に努めなければならない」と規定している。
同条により国が講じることを義務付けられた環境整備には、仕事や家庭をかかえた国民の裁判員裁判への参加を容易にするための、社会的環境整備が含まれていることは勿論であるが例えば、乳幼児を抱えた国民の参加を可能にするため託児所を設置すること及び裁判員の待合室や評議室等の物的人的環境整備も当然含まれている。
さらに、刑事訴訟法第281条の6は、「裁判所は、審理に2日以上を要する事件については、できる限り連日開廷し、継続して審理を行わなければならない」と規定している。
連日的開廷を現実に実施し、弁護人の充実した弁護活動を可能にするためには弁護人が裁判所で、開廷前あるいは休憩時間に被告人と接見したり、証人等の関係者と弁護人が打合せをすることが不可欠である。
そのための、接見室や面談室は、現在の神戸地方裁判所内にある設備では不十分であり、新たに設ける必要があるが、既存建物には、その余裕がないことも明白である。
したがって、神戸地方裁判所においては、建物の増築の抜本的対策を講じる必要があり、前記要望をする次第である。また、次の裁判員裁判の実施庁においても、上記対策を要望する。
2.現在、神戸地方裁判所尼崎、姫路、豊岡の各支部では、裁判員裁判用に法廷を改築することも具体的に計画されておらず、同支部での裁判員裁判の実施は予定されていない。
しかし、神戸地方裁判所の各支部管内の裁判員裁判対象事件を全て神戸地方裁判所本庁で実施するとした場合、神戸地方裁判所本庁から相当遠方に居住する裁判員が選任される可能性も十分あるところである。とすれば、選任された裁判員が裁判所まで通う時間がかかりすぎるなどを理由にして参加をためらうなど、裁判員裁判の実施にとって、重大な障害となる。
したがって、裁判員の参加する刑事裁判の制度を円滑に運用するための必要な環境の整備の一環として、尼崎、姫路、豊岡の各支部では、裁判員裁判を実施する必要がある。
また、尼崎、姫路、豊岡の各支部管内の裁判員裁判対象事件で、被疑者段階の国選弁護人選任事件では、各支部管内に事務所を置く弁護士が、捜査段階の弁護人に選任される他、私選弁護人も各支部管内の弁護士が選任される可能性が高い。
上記各支部管内の弁護人が、充実した弁護活動を展開するためには、上記各支部で裁判員裁判を実施することが必要である。
よって、神戸地方裁判所の尼崎、姫路、豊岡の各支部においても、前記物的人的設備を充実させた上で裁判員裁判を実施されるよう要望する。
以上