航空自衛隊のイラク早期撤退を求める会長声明
2006年(平成18年)8月11日
兵庫県弁護士会 会長 竹本 昌弘
1 政府は、本年6月20日に、イラク南部サマワに派遣している陸上自衛隊部隊を撤退させることを決定し、マスコミ報道によれば7月17日に同部隊の撤退が完了した。
しかし、航空自衛隊の派遣は継続しており、8月以降には、これまでの活動範囲を拡大して、首都バクダッドやイラク北部のアルビルなどへの空輸を行うことが決められている。
当会は、政府がイラク復興支援特別措置法(以下「イラク特措法」という)に基づく自衛隊派遣を決定したことに対して、2003年(平成15年)12月12日付で「自衛隊等のイラク派遣に反対する会長声明」を発表して、自衛隊のイラク派遣中止を求めており、今回陸上自衛隊部隊が完全に撤退したことに対しては一定の評価はできると考える。
2 しかし、当会が、自衛隊のイラク派遣に反対した理由は、自衛隊が他国内において武力行使をせざるを得ない事態が発生する危険性が高く、このような事態を招来するおそれがあるにもかかわらず派遣を行うことは、全世界の人々に平和的生存権を認め、紛争の平和的な解決に努めるとした憲法前文の理念や憲法9条に反すること、また、イラク特措法が「自衛隊などの対応措置は非戦闘地域において」実施するとしている基本原則に違反することによる。
3 この観点からすれば、今後も航空自衛隊がイラクにおいて活動し、更に活動範囲を拡大するということは、その対象地域にイラク駐留の多国籍軍にも多数の死者が発生している地域が含まれており、より一層イラク特措法が定める「非戦闘地域」の要件に該当しないことが明らかであるから、同法に違反し,しかも憲法前文の理念や憲法9条に反するものと言わざるを得ない。
したがって、当会は、航空自衛隊の活動範囲を拡大することに反対し、航空自衛隊についても、直ちに派遣を中止し、全面的撤退を行うよう求めるものである。
以上