中国残留孤児兵庫訴訟判決に関する兵庫県弁護士会会長声明
2006年(平成18年)12月1日
兵庫県弁護士会 会長 竹本 昌弘
本日、神戸地方裁判所は、中国残留孤児兵庫訴訟について、被告国の政策の違法性を認め、被告国に原告65名中61名に対して損害の賠償を命ずる判決を言い渡した。
中国残留孤児(以下「残留孤児」という)は、国が残留孤児を早期に帰国させる義務を怠り、さらに帰国した孤児の自立を支援する義務を怠ったことにより、「祖国日本の地で、日本人として人間らしく生きる権利」を侵害されたとして、2002年12月の東京地方裁判所への提訴を皮切りに、国家賠償請求訴訟を提起し、現在、全国15の地方裁判所と1つの高等裁判所において残留孤児全体の9割にあたる約2200名が国家賠償請求訴訟を行っており、兵庫県では65名の原告が2004年3月30日に提訴していた。
一連の訴訟の最初の判決となった、2005年7月の大阪地方裁判所の判決は、不当にも原告らの請求を全面的に棄却した。
しかし、本日言い渡された神戸地方裁判所の判決は、除斥期間の経過により4名についての損害賠償責任を認めなかったものの、国に帰国後の自立支援をする義務を認め、国がその義務の履行を怠ったことを正面から認めたほか、国による残留孤児帰国の妨げとなる違法な措置があったことを認めて、国に損害賠償責任を課したもので、歴史的、画期的なものと評価することができる。
日弁連は、1984年の人権擁護大会で「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択して国に早期帰国の実現や自立を促進する諸措置を速やかに講じることを求め、2004年3月には、同連合会人権擁護委員会が、国に対して、残留邦人の帰国促進策等の徹底及び帰国者の人間らしく生きる権利を確保するために生活保護に頼らない特別の生活保障給付金制度の創設等の立法措置を講じることを勧告している。
残留孤児は高齢となり、老後の生活や健康に不安を抱えており、これ以上残留孤児に苦難を強いることは許されない。
当会は、被告国が本判決に対する控訴を断念し、今回除斥期間経過により損害賠償責任が認められなかった原告も含めて、すみやかに残留孤児の生活支援等のための抜本的な救済策の立案と実施を行い、残留孤児の「祖国日本の地で、日本人として人間らしく生きる権利」の実現を図ることを強く求めるものである。