神出病院での暴行事案発生を受け、徹底的な原因究明と再発防止策を講じるよう求める会長声明
2021年(令和3年)6月16日
兵庫県弁護士会
会 長 津 久 井 進
第1 声明の趣旨
1 医療法人財団兵庫錦秀会神出病院(以下「神出病院」という)は、二度と入院中の障害者に対する人権侵害が生じないよう、直ちに、問題の所在を徹底的に究明した上で、再発防止に必要な対応を実施するべきである。 2 神戸市は、監督官庁として、速やかに外部委員によって構成される第三者委員会を設置して徹底的な調査をした上で、効果的な再発防止策を講じるべきである。
第2 声明の理由
1 本年5月20日、神戸市西区所在の精神科病院である神出病院にて、看護師が入院中の患者に対し、暴力を振るう事案が発生した。報道によれば、指示を聞かない患者を取り押さえようと胸ぐらをつかむなどの暴行を加え、軽傷を負わせていたとのことである。
承知の通り、神出病院では、昨年、元看護師らが患者に対し、わいせつな行為をしたり、いすに座らせ水をかけるなどの虐待が発覚し、当該元看護師らは有罪判決を受けるまでの事態となった。
当会は、令和2年8月3日付けで、一般社団法人兵庫県精神保健福祉士協会、一般社団法人兵庫県社会福祉士会、公益社団法人兵庫県精神福祉家族会連合会、兵庫県医療ソーシャルワーカー協会及び兵庫県精神医療人権センターと共同で、監督官庁である神戸市に対して、要請書を発しており、その中で、適切に権限を行使し、外部専門家などによって構成される第三者委員会の設置を含め、真相の究明及び再発防止のための適切な措置を執るよう求めていたところである。
これに対し、神戸市は、同月17日に、神出病院に対し改善命令を発出し、改善計画書の提出を命ずるなどの対応をした。 しかし、神出病院は、神戸市から改善命令を受けていたにもかかわらず、 それから1年も経たないうちに、再度、暴行事案を発生させたのである。
2 精神科病院に入院中の障害者は、非自発的入院の場合はもとより、そうでない場合も閉鎖的な環境にあるため様々な自由の制限を受ける立場にあり、精神科病院としては、障害者の人権に配慮した対応をとらなければならないことは当然である。公益財団法人日本精神科病院協会の定める倫理綱領においても、「すべての医療行為において基本的人権を尊重し、共感と尊敬の念をもって、適切な医療を提供することに努める」こととされている。
当会は、障害者の人権を擁護する立場として、精神科病院に入院中の障害者に対する人権侵害行為を繰り返し、今なおその改善が図られない状況は、許容できるものではない。
神出病院において人権侵害事案が繰り返されるのは、先の重大な人権侵害事案の発覚後において、真相究明に向けた措置が十分に行われず、外部委員によって構成される第三者委員会も設置されず、職員に対する真に必要な再発防止に向けた適切な対応が未だにとられていないことに起因すると思料する。
当会は、神出病院に対し、これ以上入院中の障害者に対する人権侵害を生じさせないよう、直ちに、問題の所在を徹底的に究明した上で、一人ひとりの職員に対する人権意識の徹底など再発防止に必要な対応を実施することを求める。また、当会は、神出病院が、原因究明や再発防止策を検討するに際して、必要な協力を惜しまない。
3 また、このたびの事案を受け、当会は、神出病院において障害者に対する虐待事案や暴行事案が繰り返し発生している原因について、背景要因を含め徹底的に究明する必要があると考える。
当会は、神戸市に対し、神出病院に対する監督官庁として、主体性をもち積極的に原因追究することを要請する。神戸市は、その原因追究の方法として、速やかに、外部委員によって構成される第三者委員会を設置し、徹底的な調査をした上で、効果的な再発防止策を講じるべきである。
以上