「震災後の住宅再建のクーリングオフ」神戸新聞 1997年6月19日掲載
執筆者:石丸 鐡太郎弁護士
震災後の再建で、建築に関するトラブルが相次いでいます。今回は悪質な業者への対処法の一つ、クーリングオフ制度の話です。
弁護士:青い顔してどうしたんですか。
相談者:実は、震災後に大阪の工務店という人が訪ねてきて、このままだと雨漏りがして家が傷むと言われたんです。
弁護士:それでどうしたのですか。
相談者:まじめそうで、親切な人だなと修理を頼みました。
弁護士:それは良かったじゃないですか。
相談者:早速工事にかかってもらったのですが、たまたま知り合いの工務店の人に見てもらったら、「何も修理する必要はなかったのに」と言われました。
弁護士:仕事が欲しかったからだましたのですね。
相談者:手付けに三十万円支払ったのですが、返してもらえるでしょうか。
弁護士:それは返してもらえますよ。
相談者:でも、契約書に印を押してしまっているんです。
弁護士:工務店の人が訪ねてきて契約ができているのですから、訪問販売法の適用があるんです。クーリングオフといって、理由のいかんにかかわらず、契約を解除できます。
相談者:訪問販売法が適用されるのは商品だけではないのですか。
弁護士:はい、そうじゃないんですよ。屋根の瓦(かわら)の取り付け作業などにも適用されます。
相談者:それと、契約してもう1ヶ月になるんですが、いまさらクーリングオフなどできるんですか。
弁護士:1ヶ月もたっているんですか。でも、クーリングオフできるという書面をもらってから八日間ですから、帰って契約書などを確認してください。
相談者:もう工事に入っているんですが、それでもクーリングオフできるのですか。
弁護士:はい、できます。
相談者:クーリングオフしたらどうなるのですか。
弁護士:契約がなかったことになり、払ったお金は返してもらえます。
相談者:一度屋根をめくっているので、その費用を請求されませんか。
弁護士:いいえ、請求できないことになっています。
相談者:めくった屋根は元に戻してくれるのでしょうか。
弁護士:無償で元の状態に戻さなければならないことになっています。
相談者:そうですか。これで、安心しました。
弁護士:でも、クーリングオフは内容証明郵便で出しておきなさいよ。