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1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「多重衝突事故で被害」神戸新聞 1997年8月7日掲載

執筆者:友廣 隆宣弁護士

いつ起こるか分からない交通事故。今回は二台が関係する事故に巻き込まれ、賠償請求をどちらにするのかで困っているケースの紹介です。

相談者:昨日、私の姉が交通事故に巻き込まれました。姉の運転していた車は衝突され、むちゃくちゃに壊れたのですが、おかげさまで体の方は右足を擦りむいた程度ですみ、安心しました。

弁護士:いったい、どんな交通事故だったんだい。

相談者:二台の車が、雨なのにスピードを出し過ぎ、スリップして正面衝突。そのうち一台が、たまたま交差点で信号待ちし、停車していた姉の車に衝突したんです。

弁護士:事故後、示談の話は進んでいるのかい。

相談者:姉から聞いたところでは、スリップして正面衝突した二台の車の運転手は、お互いに「お前の方か悪い」とののしりあい、姉には「相手の運転手に賠償してもらえ」と言うばかリで、全く示談の話は進んでいないようなんです。 こんな場合に、姉はどちらの運転手に賠償を請求すべきなんでしょうか。二人に請求するとしても、それぞれの運転手に賠償額の二分の一ずつを請求すべきなんでしょうか。

弁護士:お姉さんのケースは、法律上は共同不法行為と呼ばれるものだね。

相談者:でも、二人の運転手は全くの他人で、今回の交通事故もたまたま生じたのですが、それでも共同不法行為になるんですか。

弁護士:運転手が事故の発生についてまで共謀している必要はなくて、客観的に関連した共同の行為があれば足りるとされているから、今回の事故はまさに共同不法行為に当たると思うよ。だから、お姉さんは二台の車の運転手、どちらに対しても賠備額の全額を支払うよう謂求できるよ。 もっとも、賠償金の二重取りができる訳ではないから、一方の運転手から賠償額全額の支払いを実際に受ければ、他方の運転手には請求できなくなるけどね。被害者への支払額については、支払った後で運転手同士、各自の不注意の程度により負担しあえばいいのさ。

相談者:一台は国産の中古車で、その運転手からの支払いは期待できず、もう一台の外車の運転手に賠償金の半分を謂求するしかないと思っていましたので、これで安心しました。

弁護士:私も国産の中古車に乗っているが…。