「希望退職勧められたが…」神戸新聞 1997年11月6日掲載
執筆者:佐藤 功行弁護士
会社員Aさん(五二)の勤務先で希望退職の募集がありました。Aさんは会社を辞めるつもりはないのに、上司からは応じるよう説得され動揺しています。
相談者:長年勤めた会社で、自分から辞めるつもりはないのですが、上司の説得に応じないとこれから会社に居づらくなるのではないかと心配なのですが。
弁護士:希望退職というのは、会社の募集に対して従業員の自由意思によって応じるもので、応じるか否かはAさん自身が自由に判断できますし、また判断しなければなりません。
相談者:そもそも、希望退職と解雇とはどう違うのですか。
弁護士:希望退職はあくまで従業員の希望によるもので、解雇は会社が一方的にするものです。ですから、希望退職を会社が募集する際、会社の上司から従業員に対してこれに応じるよう働きかけるというのは本来おかしな話なのです。
ですが、一般に希望退職というのは、会社か従業員を整理解雇する前の雇用調整手段として行うものですから、Aさんのように会社から圧力かかかるのです。
相談者:私の場合、上司の説得に逆らって、後で不利益な処分を受けたり、解雇されることはありませんか。
弁護士:事実上、そのようなことがあるかもしれませんが、法律上はしてはいけないことになっています。そもそも会社が従業員を解雇する場合は、法律で少なくとも三十日前にその旨予告しなければならず、また、合理的な理由が必要です。希望退職に応じなかったからというのが合理的な理由にならないのは当然のことです。
相談者:具体的にはどういう場合なら解雇されても仕方がないのですか。
弁護士:解雇といっても、今回の場合に考えられる整理解雇と、懲戒解雇とでは違います。
会社の経営悪化など、専ら会社側の事情によって行われる整理解雇に限っていうと(1)解雇の必要性(会社存続のために解雇か必要で奉ること)(2)解雇回避の努力(希望退職者や他企業への出向者を募集するなどの努力をしたかどうか)(3)人選の妥当性(客観的、合理的な解雇基準があること)(4)手続きの妥当性(従業員に対する解雇基準の説明など十分納得のいく協議が行われたこと)-の四点の要件を満たせば解雇は有効とされます。