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1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「スキー場事故の賠償は?」神戸新聞 1997年12月18日掲載

執筆者:和田 恵介弁護士

いよいよ冬本番。スキーを楽しみにされている方も多いはず。そこで一足早く、スキー場での人身事故をめぐる相談を取り上げます。

相談者:ゲレンデで滑降中、上から滑ってきたAさんに衝突され、左足骨折の大けがを負いました。ゲレンデでけがはつきものとはいえ、Aさんに損害賠償を請求できないでしょうか。

弁護士:スキー中、故意または過失で人にけがをさせれば、損害を賠償しなければなりません。Aさんが故意に衝突してきたとは考えにくいので、過失の有無がポイントになります。

相談者:過失の有無はどのように判断されるのですか。

弁護士:今回のようなケースでは、一般的にAさんには下方を滑降している人の動作に注意し、接触や衝突を回避できる速度や進路を選んで滑らなければならない注意義務がある、といわれています。これをAさんが怠ったとすれば、損害賠償を請求できます。

相談者:具体的に話してもらえませんか。

弁護士:例えば、Aさんが前方をよく見て、事故が起こらないよう十分に注意を払っていたのに、あなたが突然停止したため避けようがなく、不可抗力という場合であれば、Aさんに過失はなく損害賠償の義務はないことになります。

相談者:私は突然停止したのではありません。普通に滑っていました。

弁護士:それならば、Aさんが前方をよく確認していれば衝突が避けられたといえそうです。そんな場合、つまり前方確認が不十分で、あなたに気づくのが遅れたというのならば、Aさんの過失が認められ賠償義務があることになります。
ただ、例えばの話ですが、あなたの方も突然停止したというような事情があれば、あなたにも過失があることになります。その場合、加害者側に全面的に責任を認めるのは不公平になりますから、過失相殺といって被害者側の過失も考慮して、賠償額が決まることになります。その額はあなたの過失の割合だけ減額されることになります。

相談者:今回思ったのですが、これだけスキー湯が混雑すれば、いつ私が加害者になってもおかしくありませんね。

弁護士:そうですね。スキーにはスキー保険があり、自損事故や第三者への補償が入っていますので、スキーをする場合にはぜひ掛けておきたいですね。