「職場でのセクハラ問題-不法行為で賠償判例も」神戸新聞 1998年5月1日掲載
執筆者:福田 和美弁護士
法律事務所に勤めるA子さん、休日の朝早くから鏡に向かっています。
父:おはよう、ばかに熱心だね。(ボンとA子さんのおしりをたたいて)今日はだれとデートだい。
A子:お父さんたら、まさか会社でもそんなことをしてるんじゃないでしょうね。セクハラで訴えられても知らないわよ。
父:おいおい、おっかないことを言うなよ。最近は何かというと、すぐセクハラ扱いだ。こっちは親しみを込めたスキンシップのつもりなのになあ。
A子:今のはもちろんそうよ。でも、職場の中では深刻な問題になることがあるのよ。
父:ほう、例えば。
A子:この間も事務所に相談があったわ。上司がしつこく身体に触ったり、ホテルに誘ったりするんですって。断ると、「あいつは遊び人」ってうわさを流され、職場を辞めようかと悩んでいるというの。
父:それはひどい。すでに同僚や他の上司に相談すべきだよ。
A子:でも、信じてもらえなかったり、かえって、解雇や配転されたりするだけじゃないかという不安があるのね。
父:女性の側にもすきかあるんじゃいかとか、トラブルメーカー扱いする人もいるだろうからね。そんな場合、裁判で認められるのかな。判断が難しいと思うけど。
A子:女性の側の意に反しているかどうかが重要なポイントね。上司の言動が不法行為にあたるとして、加害者の上司と会社に損害賠償の支払いが命じられた判例があるわ。
父:会社もかい。
A子:そうよ。男女雇用機会均等法の改正に禿たって、雇用主がセクハラ防止措置を講ずる必要性を明文で規定しようという動きがあるくらいよ。
父:うちの会社でも、まじめに話し合った方がいいようだね。
A子:男女どちらも尊重し合って、気持ちよく働ける場にするためにもね。お父さんの会社相手に私の事務所でセクハラ訴訟を起こすのも嫌だし…。
父:まったくすぐに脅かすんだから。