「通勤途中のマイカー事故 仕事で使うと社の責任にも」神戸新聞 1998年8月14日掲載
執筆者:木下 卓男弁護士
マイカーを仕事で使っている最中に事故が起こった場合、会社の責任はどう判断されるのでしょうか。
相談者:私の経営している会社の社員がマイカーで通勤中に事故を起こし、被害者の方にけがを負わせてしまいました。会社は責任を負うのでしょうか。
弁護士:会社としては社員のマイカーを会社の仕事にも使わせていたのでしょうか。
相談者:いいえ。うちの会社では仕事で外に出向くときには会社所有の車を使わせていて、マイカーを使わせることはありません。
弁護士:社員は、自宅と会社との間の往復のみにマイカーを使っているということですか。
相談者:そうです。
弁護士:それなら会社に賠償責任はないでしょう。
相談者:ではどんな事情があれば、会社が賠償責任を負うことになるのでしょうか。
弁護士:むしろ会社の側で、社員のマイカーを積極的に利用している場合です。ガソリン代や保険料を会社持ちにしたり、特別手当を支給したりする場合には、たとえ通勤中の事故でも会社に賠償責任を負わせる裁判判例があります。
相談者:社員がマイカーで仕事に出るのを、見て見ぬふりをしていたような場合はどうでしょうか。
弁護士:「見て見ぬふり」といってもいろいろな段階があります。「なるべく社用には使ってほしくない」というものから「使ってもらうとありがたい」というレベルまで。
相談者:ケース・バイ・ケースですか。
弁護士:車を社用に使っている比率とか、マイカーでの移動が必要な仕事なのか、事故発生場所は会社の営業区域内か、会社の敷地内に駐車させているかーなどを総合的に観察し、会社に責任があるか否かを判断しているようです。
相談者:いずれにしても、会社の車の管理だけではなく、社員のマイカー利用についても注意して見ておかないといけませんね。
弁護士:その通りです。