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1998年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「地代値上げ拒否できるか 裁判まで供託する方法も」神戸新聞 1998年9月4日掲載

執筆者:鴇田 香織弁護士

弁護士:地主から地代の値上げを要求された場合、その通りに支払わなければならないのでしょうか。

相談者:先月、地主さんから今月分からの地代を値上げするという通知が届いたのですが、これまでに二回も値上げしています。どうしても応じなければならないのでしょうか。

弁護士:土地建物の賃貸借契約の当事者は、地代・家賃がその物件の税金や近隣相場などに合わなくなった場合に、特約のない限り増減額できます。地価高騰や固定資産税、都市計画税の上昇などの事情があれば値上げも可能でしょうが、地価が下がり、税金も安くなっている現在では、値上げは難しいのでは。必ずしも応じなければならないことはないでしょう。

相談者:具体的にどんな手続きを取ればいいですか。

弁護士:地代・家賃の改定は当事者の協議によるのが原則ですから、まず、地主さんと話し合ってみられてはどうでしょう。協議が整わない時は、値上げを求める当事者が調停や裁判手続きを取ることになりますが、それまでは借り主として適正 と認める金額の地代(例えば従来の額)を支払うことになります。

相談者:従来の額の地代を持っていっても地主さんか受け取ってくれなければどうしたらいいですか。

弁護士:地代を法務局に供託すれば、借り主の責任はとりあえず果たします。供託には地主の受け取り拒否の意思が明確なことが必要ですので、少なくとも一回は賃料を直接持参するなど支払いの用意があることを示して下さい。

相談者:万が一、調停や裁判で値上げが認められた場合、供託をしていて問題となることはありますか。

弁護士:値上げが正当と認められると、借地人は値上げを請求されたときにさかのぼって、差額に年一割の利息を付加して支払わなければなりません。そこで前もって、このくらいはやむを得ないと思われる金額を従来の額に加えて供託しておくという方法かありますので参考にして下さい。