「定期借家権-契約満了で明け渡す」神戸新聞 2001年2月14日掲載
執筆者:村上 英樹弁護士
家屋の賃貸借契約で、家主から定期借家権の契約にしてほしいと言われています。普通の借家契約とどう違うのですか。
相談者:賃貸家屋を探していて、気に入った物件が見つかったのです。
弁護士:ほう、それはよかったですね。
相談者:でも、気になることがあって、家主さんから、「この物件は日当たりも良く、人気があるので、定期借家権の契約にしてほしい」と言われているのです。定期借家権の契約というのは、普通の借家契約とどう違うのですか。
弁護士:定期借家権というのは、去年できた制度です。定期借家契約では、普通の借家契約とは違って、契約期間が満了したときに契約の更新ということがありません。家主に明け渡しを求める正当な理由があるかないかに関係なく、明け渡しを求められます。
相談者:えーっと、普通の借家契約では契約期間が終了しても出て行かなくていいんですよね。
弁護士:通常はそうですね。普通の借家契約の場合、賃貸借の期間が満了しても、家主が借家人に明け渡しを求める正当な理由がないと契約は更新されます。
相談者:あ、そういうことなんですか。だけど、その正当な理由とかは関係なく、契約が終了してしまうというのが、定期借家権というわけですか。
弁護士:まさにそうです。だから、定期借家権では、契約期間の満了により常に明け渡しを受けることができるので、家主としては将来の見通しが付けやすくなるわけです。
相談者:では、期間満了になったら絶対に住み続けられないのですか。
弁護士:絶対というわけではないです。期間満了時に新契約を結べば住み続けられます。だけど、あらためて敷金・礼金が要求されたり、高額な賃料が要求されたりすることもあります。不動産業者の仲介料を要求されることも覚悟しないといけません。それで、あなたは、長く住み続けるつもりなのですか。
相談者:いやいや、私は、これから二年間の関西勤務の間の住まいを探しているわけで、二年後には、また関東に戻るつもりです。
弁護士:じゃあ、もし、賃貸借期間二年間の定期借家契約が結べるというのなら、それでもいいと思います。家賃や敷金・礼金の面でも定期借家の方が通常の借家契約よりお得な場合も多いでしょうし。
相談者:じゃ、それでいきます。他に何か注意すべき点はありませんか。
弁護士:定期借家契約書を十分検討し、賃料の改定についてどう規定されているか、中途で解約をすることができるのか、などをしっかり確かめ、不利な内容の契約を結んでしまわないようにして下さい。
相談者:転ばぬ先のつえ、というわけですね。気を付けます。