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2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「推定相続人の廃除-相続権の有無、家裁に請求を」神戸新聞 2001年9月5日掲載

執筆者:吉田 哲也弁護士

私には2人の息子があり、妻は既に他界しています。長男は素行が悪く、家の金を勝手に持ち出したり、私の名前を無断で使って借金ををしたりと、後始末に大変な苦労をしました。他方、二男は、家業を手伝ったり、私の身の回りの面倒を見てくれるので、私としては死後、財産のすべてを二男だけに相続させて、長男には一切取得させないようにしたいのですが、どんな方法があるでしょうか。

相談者:長男も相続するのですよね?

弁護士:長男は、あなたの子ですから、あなたが亡くなれば、二男とともに相続人になります。

相談者:何とか、私の財産が長男に一切いかないようにする方法はないでしょうか?

弁護士:まず、遺言を書いておくことが考えられます。あなたの全財産を二男に取得させる旨を、遺言にしたためるのです。

相談者:それだけで、長男は、財産をとれなくなるのですか?

弁護士:いいえ、長男は、遺留分減殺請求権を行使して、反撃してくるかもしれませんね。

相談者:遺留分減殺請求権とは、何ですか?

弁護士:本来相続権がある者に、最低限の取り分を保証する制度です。長男が、この遺留分減殺請求権を行使すれば、長男は相続財産全体の四分の一を取得できることになります。ただ、この権利行使は、遺言があることを知ってから一年以内になされる必要があります。

相談者:私はその四分の一も相続させたくないのです。何とかならないのですか?

弁護士:長男には非行があるようですね。民法上、被相続人であるあなたを虐待したりする相続人を「廃除」することができます。廃除されれば、長男はあなたの財産を相続できません。長男の場合、虐待があるとまでは言えるかどうか微妙かもしれませんが、「著しい非行」があると言えるでしょうから、これを理由に、廃除することができると考えられます。

相談者:長男を廃除するにはどうしたらいいのですか?

弁護士:長男を廃除する請求を家庭裁判所に対して起こすのです。

相談者:廃除の請求をする間もなく、私が死んだら、もうどうしようもないのですか?

弁護士:長男が遺留分減殺請求権を行使してきた場合、二男としては、長男による遺留分減殺請求権の行使は権利の乱用であるという反論をすることも考えられます。実際に、養子が、窮迫した養家を立ち去り、養父母を扶養せずにいながら、後に養父がその後面倒を見てくれた第三者になした贈与に対して、遺留分減殺請求した事案で、裁判所は、その請求が権利乱用に当たるとした事例があります。