「財産分与-請求は離婚後2年以内に」神戸新聞 2001年11月20日掲載
執筆者:髙本 知子弁護士
協議離婚は成立しましたが、1年以上たっても財産の清算ができていません。3年後に退職する夫の退職金は、どうなるのでしょうか。
弁護士:離婚に際して配偶者の一方から他方に財産給付をする場合、慰謝料、離婚後の扶養料、夫婦共同財産の清算の支払いがあります。
相談者:よく言われる財産分与というのはどういうものですか。
弁護士:民法768条に財産分与の規定があり、一般的には、(1)夫婦が婚姻中に協力して蓄財した財産の清算(2)過去の婚姻費用の精算のほか(3)離婚後の扶養料(4)慰謝料の要素も含まれるとされています。
相談者:財産分与は、どのようにして請求すればよいのですか。
弁護士:当事者の協議で分与額を決められます。離婚後で協議が進まない場合、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てます。調停が成立しない場合は審判手続きに移され、家庭裁判所が財産分与の判断(審判)をします。審判に不服があれば二週間以内に高等裁判所に即時抗告という不服の申立ができます。
相談者:三年後に支給される退職金を財産分与の対象にすることはできますか。
弁護士:退職金は賃金の後払いと言えますし、退職金が婚姻期間中夫婦の協力によりできた共同財産と言える限り清算の対象にすべきです。ただ、将来支給される退職金は、会社の存続、将来の経営状況、退職時期や退職理由によって退職金の有無、額が左右されるため、どのように清算するか問題で(1)財産分与の金額を判断するにあたって考慮すべき一事情とする説(2)離婚時点で退職すれば支給されるであろう退職金の額を財産分与の対象とする説(3)将来支給される蓋然(がいぜん)性が高い場合に将来支給されることを条件に財産分与の対象とする説(4)将来支給される蓋然性が高い場合に将来の退職金額を現在額に引き直して財産分与の対象とする説があり、それぞれの説の審判や裁判例があります。中には退職まで七年のケースもあり、他の事情にもよりますが三年後の退職金を財産分与の対象にすることは可能だと思われます。
相談者:財産分与請求は、いつまでにしなければならないのですか。
弁護士:離婚後二年以内に家裁に申し立てなければなりません(民法768条2項ただし書き)