「面接交渉権-調停で駄目なら審判へ」神戸新聞 2002年3月5日掲載
執筆者:東 泰弘弁護士
離婚調停中の妻から、「子どものために良くないから、離婚後一切子どもとは会わないでほしい」と言われているのですが、親がわが子に会わせてもらえないなどということがあるのですか?
弁護士:あなたとしては、奥さんとの離婚に応じた上で、親権についても、奥さんにゆだねるつもりですか?
相談者:はい。子どもはまだ小さいですし、私は毎日、仕事で家に帰るのも遅く、子どもの面倒を十分に見てやることはできません。ですから、子どものためにも、親権は妻に渡した方がよいと思うのです。でも、だからといって、子どもには一切会わせてもらえないというのは納得がいきません。
弁護士:確かに、離婚したから、親権を持たないからといって、直ちに自分の子どもと会う権利まで有しないということにはなりません。法律の条文に明確に規定されているわけではありませんが、親であるというそのこと自体によって、自分の子どもと面接したり、文通したりする権利、つまり面接交渉権が認められます。
相談者:しかし、妻の私に対する現在の態度から判断して、私に面接交渉権があることをいくら説明しても、とても子どもに会わせてもらえそうにありませんが…。
弁護士:夫婦だけでは話し合いがまとまらないという場合、家庭裁判所における調停の場で話し合うことになります。それでも駄目な場合には、審判という形で、面接交渉権の具体的内容を裁判所に決めてもらうことになります。
相談者:今までのお話ですと、私には子どもと会う法律上の権利があって、その権利を妻が認めようとしないなら、裁判所に頼んで権利の内容を決めてもらえばよい、ということですね?
弁護士:そうです。ただし、注意していただきたいのですが、面接交渉権も無制約ではありません。権利といえども、他の人の利益を侵害してまで行使することが許されないのは当然です。面接交渉権について言うと、最も考慮されるべきは、成長過程にある子どもの利益です。あなたの奥さんは、あなたに対して、子どものために良くないから、離婚後は一切子どもとは会わないでほしいと言っているようですが、例えば、あなたはしつけと称して、お子さんに対して度を過ぎた体罰を加えたりしたことはありませんか?
相談者:とんでもない。私がそんなことをする人間に見えますか?
弁護士:まあ、今のはあくまでも例えばの話ですから、どうか気を悪くしないでください。とにかく、親との接触が子どもの健全な成長の妨げになる場合には、親の面接交渉権も制約される場合があるということです。