「知人への貸金-あいまいにせず契約書を」神戸新聞 2002年6月4日掲載
執筆者:尾藤 寛弁護士
知人にお金を貸すことになりました。あいまいにしないためには、どのような点に注意すればいいでしょうか。
弁護士:契約書を作っておきましょう。知人にお金を貸すのは、消費貸借契約という契約になりますからね。
相談者:でも、知人に「契約書にサインしてくれ」なんて言うのは、なんだか気まずいのですが。「自分を信用していないのか」と思われそうです。
弁護士:後で「貸した」「いや、借りてない」などともめてしまうと、気まずいだけでは済みません。多少気まずくても、きちんと契約書を作っておけば、後の紛争を予防できると割り切って考えましょう。
相談者:では、契約書には何を書けばいいのですか。
弁護士:まず、貸主と借り主がだれなのか、貸した金額はいくらか、貸したのはいつか。それから、返済の時期と方法。つまり、いつまでに返せばいいのか、分割であれば毎月末日か、銀行振り込みで返済するのか、借り主が貸主の家に持参して払うのか、などですね。
相談者:ほかには?
弁護士:利息は年何%か。返済が遅れたときの損害金はつけるのか、保証人はつけるのか、つけるのであれば誰か。これらの事項について、きちんと合意をしておき、その内容を契約書に書いておくべきです。
相談者:契約書には決まった形式があるのですか。
弁護士:特にありません。ただ、実際に貸金を回収するときのことを考えると、公正証書を作成しておくことが望ましいです。
相談者:公正証書とは何ですか。
弁護士:公証人が、法律行為その他の私権に関する事実について作成する文書です。公正証書に、執行認諾文言というものを記載すると、借り主がお金を返してくれないとき、訴訟を起こさなくても強制執行ができるので、債権回収の費用と時間が節約できます。
相談者:公正証書を作るにはどうすればいいのですか。
弁護士:借り主と一緒に公証役場に行ってください。本人確認のため、実印と印鑑証明書を持っていきましょう。