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2002年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「失踪者と相続-家庭裁判所に申し立てを」神戸新聞 2002年10月29日掲載

執筆者:籾井 美恵子弁護士

息子が失踪(そう)して10年ほどたちますが、先日、夫が死亡してしまいました。相続問題はどうなるのでしょうか。

弁護士:ご主人にお子さんは何人いますか。

相談者:行方不明の息子一人だけです。

弁護士:とすると、このままでは、あなたとその息子さんが、ご主人の財産を半分ずつ相続することになります。

相談者:でも夫が亡くなり、一人息子も行方不明ですから、私は夫が残してくれた財産をすべて処分して老人ホームに入居したいと考えています。その場合どうすればいいのでしょうか。

弁護士:息子さんが失踪して10年ほどたつということですから、失踪宣告を受けることにより、相続問題を解決する方法が考えられます。

相談者:失踪宣告とはどのような制度なのですか。

弁護士:不在者の生死不明が一定期間継続した場合に、一応その者が死亡したものとみなして、法律関係を確定する制度です。普通失踪と危難失踪の2種類があります。息子さんの場合、乗っていた船が沈没したなどの特別の危難によって生死不明となっていないので、普通失踪となります。

相談者:失踪宣告を受けるにはどうしたらいいのですか。

弁護士:7年以上不在者の生死が明らかでない場合、相続人らの利害関係者が、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをすることができます。

相談者:どのような効果が生じるのですか。

弁護士:宣告を受けた者は、7年の失踪期間が満了したときに死亡したものとみなされることになります。ですから息子さんも失踪宣告を受けると、失踪から7年が経過した時点で死亡したものとみなされます。その場合息子さんは、ご主人の死亡前に既に亡くなっていたことになるので、ご主人の財産はあなた一人が相続することになります。
もっとも、仮に息子さんにお子さんがいる場合は、そのお子さんが息子さんに代わり、あなたとともにご主人の財産を相続することになります。

相談者:失踪宣告後に息子が戻ってきた場合はどうなるのですか。

弁護士:息子さんが生存していた場合には、本人または利害関係人が失踪宣告の取り消しを家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が息子さんの失踪宣告を取り消すことになります。この場合、息子さんが相続するはずであった財産であなたの手元にある財産は息子さんに返さなければなりません。