「被疑者の権利-一定の面会や物の授受可能」神戸新聞 2002年11月19日掲載
執筆者:林 泰民弁護士
夫が傷害事件を起こして、警察に逮捕されました。夫はこれからどうなるのでしょうか。
弁護士:さしあたり、警察署の留置場に収容され、捜査機関による取り調べを受けることになります。
相談者:取り調べには、応じなければならないのでしょうか。
弁護士:被疑者には黙秘権があるので、黙っていることもできます
相談者:その後、どうなるのでしょうか。
弁護士:捜査の結果、留置の必要がないときは釈放されますが、そうでないときは、72時間以内に勾留(こうりゅう)請求されるか公訴を提起されます。勾留請求は裁判所に対してなされ、裁判官が勾留質問をしてから釈放するか、勾留するかを決めます。
勾留期間は原則10日で、この期間内に検察官が本人を釈放するか、公訴を提起することになりますが、事情によって10日間を超えない限度で延長されることがあります。
勾留場所は、拘置所が本来ですが、多くは警察署の留置場に拘束され、公訴の提起後、拘置所に移されます。公訴提起された場合には相当の期間をおいて公判が開かれ、審理のうえ、刑が言い渡されます。公訴提起後は、保釈の請求ができます。
相談者:釈放されないときは、面会や物の差し入れはできますか。
弁護士:立会人が付いたり、時間が30分以内という制限はありますが、面会や、書類や物の授受はできることになっています。勾留決定前の被疑者には面会の権利はないという説が多いですが、実際には、警察などの執務に支障がない限り、面会させてくれるようです。事件によっては裁判官の接見禁止決定が出ており、その解除の申し立てをして解除決定を得てからでないと、面会することができません。
相談者:弁護士を頼むことはできますか。
弁護士:拘束されていてもいなくても、被疑者やその配偶者は、弁護士の中から弁護人を選任することができます。
相談者:弁護士を知りませんが。
弁護士:逮捕・勾留された被疑者は、弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができます。また、各地の弁護士会では当番弁護士制度を設け、身柄を拘束された被疑者やその配偶者からの依頼があれば、待機している弁護士が、その日か次の日に面接にいくことになっています。