「名義貸し-親しくともはっきり断る」神戸新聞 2003年10月21日掲載
執筆者:堀川 隆二弁護士
弟から頼まれて車購入の際のクレジット契約書に名前を貸しました。「支払いはちゃんとするから」という念書を入れてもらっているので安心しています。クレジット会社から請求があったら、私は支払わなくても良いのですよね。
弁護士:ご相談の件は、いわゆる「名義貸し」といわれるものです。商品を分割払いで購入するのに、信販会社が消費者に代わって代金を販売店に支払い、後に消費者が信販会社に返済をしていく契約において、名前を他人に貸すことを言います。質問への答えとしては、弟さんが支払っている限りは支払わなくてもよいでしょう。
相談者:弟が支払えなくなった場合は?
弁護士:クレジットの申込書に押す印鑑はどうしましたか。
相談者:私の印鑑を貸してやりました。
弁護士:信販会社からクレジット利用の確認の電話はありましたか。
相談者:「ご利用ありがとうございました」という電話があったので、「はい」と答えました。
弁護士:あなたは自分の名前を使うことを承諾し、信販会社からのクレジット利用確認の電話にも間違いないと答えてしまっています。したがって、弟さんが支払えなくなったら、あなたが支払わなければなりません。
相談者:弟に名前を貸してくれと頼まれただけで、念書もありますが。
弁護士:名義を貸すということは、信販会社と名義を借りた者、今回の件で言えば信販会社と弟さんではなく、名義を貸したあなたとの関係になります。信販会社にとっては、あなたと弟さんとの間でどのようなやりとりがあったかは、全く関係のないことなのです。
相談者:でも、私は車を受け取って使っているわけでもありません。クレジットで購入した場合、商品を受け取るまで、クレジット代金の支払いをしなくてもよいと聞いたのですが。
弁護士:そういう規定が割賦販売法という法律に定められています。しかし、今回のように自分の名前を他人に貸した場合は、信義則上、支払いを拒絶できないというのが裁判例です。
相談者:では私は、弟の支払いが滞った場合には支払わないといけないということですね。
弁護士:はい。いくら頼まれても、他人には自分の名前を貸さないようにしなければいけません。「絶対に迷惑をかけない」などと言われてもはっきりと断るようにしましょう。これは、頼まれて他人の代わりに自分の名義でお金を借りたりする場合も同じです。