「名前の変更-事情によって家裁が判断」神戸新聞 2004年3月2日掲載
執筆者:長城 紀道弁護士
Q:私の夫は相当な占い好きです。「私の運勢は相当に悪い。名前を変えれば運気が上がる」などと理由をつけて、自分の名前を変えると言っています。名前の変更って、そんなに簡単にできるものなんですか?
A:氏名は、自分を他人と区別するとても大切なラベルです。「名簿」というものがあることから分かるように、氏名を基準に情報を管理し利用することは、私たちの社会で広く行われています。氏名が簡単に変わってしまうと、社会生活にいろいろと不都合が出てくるかもしれませんから、結論から言うと、そんなに簡単に変えることはできないのです。
さて、結婚や養子縁組などで名字が変わることがあります。これ以外に、どうしても氏名を変える必要がある場合には、家庭裁判所が例外的に許可することになっています。
では、変更できるのはどんな場合でしょうか。
例えば、氏名が珍妙難解▽職業上襲名改名の必要がある▽同じ地域に同姓同名がたくさんいる▽異性と紛らわしい名前-などが挙げられます。
このほか、近年の審判例には、幼少時に受けた虐待を思いだして、強い精神的苦痛を受けるといった個人的な理由によっても、氏名の変更を認めたものもあります。
いずれも、国が「君の氏名なんだから、他人と君を区別するために名乗り続けなさい!」と強制していいのかどうかが、判断の基準になると思われます。なお新氏名については、あらかじめ通称として継続的に使用されていないと、変更が認められにくいといわれます。
そこで回答ですが、ご主人が長期間別の名前を通称として使用していた場合、変更が認められることもあるかもしれません。この場合も単に占いだけを理由にせず、占いを利用された背景にある具体的事情を、裁判所に訴える必要があるでしょう。