「家賃値下げ-相場など状況次第で賃料減額請求は可能」神戸新聞 2004年12月7日掲載
執筆者:向山 大輔弁護士
Q:商業ビルの一室を借りて、居酒屋を経営しています。5年前から家賃は変わっていません。ところが、1年前に同じ広さの隣の一室が店を閉め、新たに入った店主に聞いてみると、私の店より随分安い家賃で借りているのです。同じぐらいの家賃に下げてもらえないのでしょうか。
A:貸主と値下げ交渉をしてもなかなか話がまとまらないような場合、近所の家賃が軒並み値下がりしているといった事情があれば、借り主から貸主に「賃料減額請求」ができることもあります。
賃料減額請求とは、借り主から貸主に対し、土地や建物の値段や近所の同じような賃貸物件の相場などからみて、「相当」な額に家賃を減額するよう請求することをいいます。 一定の条件の下でこの減額請求をすると、法律上は自動的に、家賃が客観的にみて相当な額に減額される建前になっています。
ただ、減額請求後も貸主が家賃の減額を認めず、引き続き従前通りの金額を請求してきた場合、借り主としては、とりあえず、貸主の請求する額の家賃の支払いに応じておく必要があります。もし、借り主が自分で相当だと思う分しか家賃を支払わなかったような場合、債務不履行とされて立ち退きなどを命じられる可能性もあるので注意が必要です。
その後、どうしても話がまとまらなければ、最終的には裁判所に訴えを起こし、貸主に対して、これまで払い過ぎていたと思う分をまとめて返還するように請求することになります。
別の方法として、減額請求をする前に、裁判所の「調停」という手続きで貸主と話し合いをしてみることもできます。調停では、調停委員という第三者が間に入り、当事者の話し合いを手助けしてくれるほか、妥当な解決案を考えてくれることもあります。