「新会社法って?-自由度を高めたのが特色」神戸新聞 2005年11月29日掲載
執筆者:石井 龍一弁護士
Q:前回の「くらしの法律相談」で、新会社法の制定により有限会社制度が廃止されることが解説されていましたが、新会社法とはどのような法律なのでしょうか。また、どうして新しい会社法が制定されることになったのでしょうか。
A:これまで、商法という法律の中にあった会社に関する法制は、旧来の漢文仮名交じりのままの条文で、度重なる部分的な改正を経たため構成も複雑になっていました。そこで今回の改正では規定を抜本的に改め、新たに「会社法」という名前の法律とし、条文の体系を整理して現代語化するとともに、現代のニーズに合わせた内容を盛り込んだ法律となりました。
旧法では、大きな上場会社に適した法制をまず原則として定め、中小企業は例外的にその原則を修正した規定で対応してきました。しかし、一口に株式会社といっても世界的に有名な大企業から家族だけが株主の小さな会社まで、さまざまな規模や特色があり、特に日本の株式会社のほとんどは中小企業であるという実態に従来の法律は合っていなかったのです。そこで、新会社法では、むしろ中小企業を念頭に置いた法制度を原則に位置付け、大企業については例外的に規定するというように変わりました。会社がそれぞれの規模や特色に応じ適切な制度を利用できるようになり、また、不要、過剰な規制を受けることもなくなったと言えるでしょう。
具体的に今回の改正で目立つ点としては、例えば、有限会社という制度が廃止されるなど会社類型自体の改革が挙げられます。また、従来、株式会社を設立するには資本金は一千万円以上、取締役三名が必要だったのですが、新会社法では、これらの規制を撤廃して、資本金は一円でもよく取締役は一名でよい等規制緩和が進められました。
新会社法は、それぞれの会社が業態や特色、規模に応じて、自由に自社の在り方を設計できるという自由度が高められたことが最大の特色です。会社経営者は、その自由度を上手に活かして自社の設計をしていくことが求められるでしょう。