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2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「貸したカードの支払い-親しい間でも絶対貸さない」神戸新聞 2006年6月6日掲載

執筆者:新井 大介弁護士

Q:私(男性)は、A子さんから洋服を買ってと言われ、これで買っていいよと、私のクレジットカードを貸しました。ところがカード会社からのその月の請求を見ると、洋服以外にA子さんが勝手に利用した高額の飲食代などが含まれていました。その支払いまで私がしなければいけませんか。

A:一般に、クレジットカードの利用規約では名義人以外の人にカードを使用させること(名義貸し)を禁じており、名義貸しを行った際に無断利用された分については、名義人が負担することとされています。

本来、自分が合意した事柄でなければ支払義務など生じないのが法律の原則ですが、名義人には名義を貸したというルール違反があるため、その際に無断で利用されたとしても名義人自身に支払いの義務を負わせたものであり、裁判例上も合理性を有する規定であるとされています。

そのため、あなたがA子さんにカードを貸し、A子さんがあなたとの約束以上に無断で使用していたとしても、その支払い義務は原則として名義人であるあなた自身が負うことになります。

ただ、カード裏の署名と、売上票の署名が明らかに異なるような場合(例えば、カード裏にはあなたのフルネームの署名があるのに、お店の売上票にはA子さんの名前で署名されている場合)、署名の確認義務違反があるとして一定の限度で支払いを免れることができるとした裁判例も存在します。

その意味では、女性であるA子さんが、男性であるあなたの名前で売上票に署名をした場合であっても、署名の確認義務違反があるとして一定の限度で支払いを免れることができるものと思われます(右の裁判例では、二分の一について免れるものとされました)。

とはいえ、クレジットカードを他人に貸した場合、盗難保険の適用外となるなど支払い義務以外にも不利益が生じます。トラブルを避けるため、たとえ家族や親しい友人であっても、クレジットカードの貸与は絶対にやめておきましょう。