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2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「交通事故でペット死亡-慰謝料認定のケースも」神戸新聞 2006年10月17日掲載

執筆者:細川 歓子弁護士

Q:長い間、家族同然にかわいがっていたペットの犬が交通事故に遭って死んでしまいました。 以前、大切に乗っていた車が交通事故で廃車になったとき、相手の保険会社の人から「慰謝料は払えない」と言われたのですが、ペットが死んだ場合は、慰謝料を請求できるのでしょうか。

A:今回の交通事故では、あなたの側で犬の管理が不十分だったなどという事情がない限り、あなたは、車の運転者や所有者へ、犬を失ったことによる損害賠償を請求できます。

ここでいう損害には、大きく分けて(1)犬そのものの価値(2)犬を失ったあなたの精神的苦痛-があります。

(1)は、その犬を事故当時に売ったと仮定した価格です。数年にわたって飼っていた犬の場合、お金を出して買い取りたいという人は通常いませんので、売れないもの、すなわちゼロ円と評価されてしまうことが多いでしょう。もちろん、その犬が血統書つきだったり、繁殖して譲渡することを目的として飼育していたりすれば、高い値段がつく場合もあります。

(2)に対する損害賠償が、いわゆる慰謝料です。交通事故で車が廃車になった際は、慰謝料がもらえなかったとのことですが、車は同一の車種を買えば代わりがききます。このため、加害者は、交通事故時点での車の評価額を賠償すれば足り、車が廃車になったことによる精神的苦痛は認められず、慰謝料は発生しないと考えられています。

民法ではペットの犬もひとつの「物(ぶつ)」と扱われます。そういう意味では、車と同じです。

しかし、ペットの犬は車と異なり、生命や個性があり、コミュニケーションを通じて飼い主にとってかけがえのない存在となりえます。

このように、ペットの犬はその他の「物」と違って代わりがきかないことから、あなたにとって家族と同様にかけがえのない存在であったことが裁判で認められれば、犬を失った精神的苦痛に対する慰謝料が認められるケースもあります。

とはいえ、裁判をしたとしても、認められる慰謝料の額は10万円前後、特殊なケースでも30万円程度であり、家族同然の犬が突然いなくなった悲しみを考えると、現状では決して十分とはいえないでしょう。