マンション住民行方不明に-裁判で明け渡し請求可能 神戸新聞 2008年6月3日掲載
Q:私は、マンションの大家をしていますが、突然賃借人が家財道具を残し、失踪しました。
部屋を明け渡してもらいたいのですが、賃借人が行方不明であれば裁判もできないのでしょうか。
A:裁判で明渡請求できます
まず、部屋を明け渡してもらうためには賃貸借契約を解除しなければなりません。
延滞賃料請求の催告と、解除の意思表示をすることが必要ですが、賃借人が所在不明のため、解除の通知が賃借人に到達せず、解除の効力が生じないという点が問題となります。
この点に関しては、賃貸人は、マンションの明け渡しを求める裁判を提起する際、訴状で解除の意思表示をして、公示送達の手続(裁判所に2週間訴状を掲示することで相手方に訴状が送達されたとみなされる)を取ることで解除の効力が認められ、裁判できます。
その際、行方知れずということを、所在調査報告書を作成し、裁判所に証明しなければなりません。
そして、明け渡してもらうためには、解除の意思表示、マンションの明渡請求と延滞賃料の支払い請求を訴状に記載して裁判を提起し、確定判決を得た上で、家財道具に対して強制執行を申立て、競売するとよいでしょう。
ただ、この方法によっても、時間がかかり、処分費用が高かったりすることも多いので、契約時の保証人に明け渡しの手続きをしてもらい、家財道具を引き取ってもらうことが出来れば最善でしょう。
なお、保証人による対応が出来ない場合、面倒だからといって、無断で賃借人の部屋に入り、家財道具の運搬、処分をすることは、住居侵入罪、窃盗罪に該当する犯罪行為となり、民事上も不法行為となり損害賠償責任が生じますので、やはり法的手続が必要となります。
実際の事例では、延滞賃料額、敷金の有無などいろいろな事情を考慮する必要があり、事例ごとに判断が異なることもありますので、お困りの際は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。