亡父の借金の請求書-相続放棄し、負担を回避 神戸新聞 2008年7月29日掲載
Q:事業をしていた父が亡くなりました。
兄と私が相続ですが、事業を承継する兄が全ての財産を相続することとなりました。
ところが、父にお金を貸していたという人から、私に請求書が送られてきました。
私は支払わないといけないのでしょうか。
A:お父さまにお金を貸していた人をA氏とします。
A氏への借金も、相続債務として相続の対象となりますので、A氏は相続人に対して貸金の請求ができます(民法896条)。
あなたとしては、お父さま財産はお兄さまが全て相続しているのに、借金だけ支払わなければならないというのはたまらないでしょう。
借金の負担を回避するための最も確実な方法は、相続の放棄です。
相続を放棄すれば、相続人ですらなかったことになります(民法939条)。
相続人でないため、親の借金を相続することもありません。
相続放棄は、相続開始から原則として3ヶ月の熟慮期間のうちに家庭裁判所に対して申述する必要がありますから(民法915条)、あなたがこの手続きを取っていれば、A氏支払う必要はありません。
まだ三ヶ月経過していなければ、手続きを急いで下さい。
熟慮期間を経過したことが明らかな場合、家庭裁判所は相続放棄の申述を受理してくれません。
相続放棄をしていなかった場合、あなたは、相続人として本件借金(金銭債務)を共同相続人であるお兄さまとの間で2分の1ずつ分割して負担することになります(民法899条)。
その後、あなたとお兄さまとの間で、お兄さまに全ての財産を相続させる旨の遺産分割協議が成立した場合でも、本件借金のあなたの負担分をお兄さまに引き受けさせることをA氏が了承しない限り、結論は同じです。
つまり、あなたが相続放棄をしていない限り、A氏に対するお父さまの借金の半分を支払わなければならないことになります。
後は、借金をお兄さまに引き受けてもらい、ご自分の負担をなくすことができるよう、あなたとお兄さまとA氏の三者で協議すべきでしょう。