介護施設で骨折-施設側に過失あれば賠償責任 神戸新聞 2009年3月17日掲載
Q:母は介護施設で暮らしていましたが、先日、施設内で転倒し、足を骨折してしまいました。
お金を払って施設に入所している以上、そこで起きた事故は全て施設に賠償責任を問えると
考えていいのでしょうか?
A:介護施設において発生した転倒事故によって生じた損害について、どんな場合でも介護施設側に賠償責任を問うことができるとは限りません。
介護施設に、賠償責任を問うことができるのは、「転倒事故につき、介護施設側に責任がある」といえる場合なのです。
責任があるとは、介護施設側に「故意または過失」がある場合です。
おおよそ、故意とは「わざと」過失とは「不注意」という意味ですから、施設側が「わざと」または「不注意」で施設利用者に傷害を負わせた場合に賠償責任が生じるということになります。
具体例を挙げ説明しますと、例えば単独では歩行が困難な利用者が、「施設の床が濡れて滑りやすくなっていたのに職員が放置していたため、滑って転倒して怪我をしてしまった」「介護中に介護者が階段の段差に気付かなかったため、利用者が転倒してしまった」などの場合には、施設側に責任があるといえるでしょう。
これに対して、「利用者が突然予測できない行動を採った結果、転倒して怪我をした」ような場合には、施設側に故意も過失も認められないことがあり、そうなると施設側に賠償責任は生じません。
また、施設側の責任によって事故が起こったといえる場合でも利用者側にも「落ち度」が有る場合には、全額の賠償責任は認められないこともあります。
施設内での事故の場合、事故の態様や原因の把握、事故後と対応、利用者の素因、保険など複雑な要素が絡んでくることがありますし、そもそも施設との契約の中に賠償責任についての特約が含まれている場合も考えられます。
まずは、法律の専門家に相談することをお勧めします。