購入した絵が盗難品-2年経過なら返す必要無し 神戸新聞 2009年4月7日掲載
Q:絵の収集が趣味の知人から絵を購入したが、実は盗難品であることがわかった。
盗難品とは全く知らなかったが、以前の所有者か「絵を返してほしい」と求められている。
返さなければならないのでしょうか。
A:真の所有者でない人から物を購入した場合、買主はその物の所有権を取得できないのが大原則です。
しかし、民法192条は、取引の安全の見地から、たとえ取引の相手方が物の真の所有者でなかったとしても、
そのことを知らないで(法律用語では善意といいます)、かつ、知らないことに過失つまり不注意がなく、その物を売買などの取引行為により取得した者は、所有権を得ることができると規定しています。
これを即時取得といいます。
相談者は、絵の売り主である知人が真の所有者でなかったことは知らなかったということですから、知らなかったことにつき不注意もなければ、絵を即時取得することができ、もとの所有者からの返還請求にも応じる必要は
ないようにも思われます。
もっとも、この即時取得には例外があります。
すなわち、民法193条は、物が盗品又は遺失物であった場合、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失のときから2年間は、物を即時取得した者から取り返すことができると規定しています。
したがって、相談者の場合も、絵は実は盗難品であったわけですから、被害者であるもとの所有者から絵の返還を求められた場合、盗まれてから2年以内であれば、もとの所有者に返さなければなりません。
この民法193条にはさらに例外があり、即時取得した人が、お店や商人からその物を買った場合、物を返還する代わりに、支払った代金を被害者から弁償してもらうことができます(民法194条)。
しかし、相談者の場合は、絵の収集が趣味の知人から購入したわけですから、民法194条の場合に当たらず、もとの所有者から売買代金の弁償を受けることはできないと考えます。
本件の場合、絵が盗まれてから2年以内であれば、相談者は、もとの所有者に絵を返さなければ
ならないでしょう。
2年が経過し、かつ即時取得が認められる場合は、絵を返す必要はありません。