子どもの親権-子の利益を最優先して判断 神戸新聞 2012年4月3日掲載
Q:妻と離婚協議を進めています。4歳の子どもの親権は父親の私が取りたいと考えていますが、親権については女性が有利とも聞きますが、どのような基準で決められるのでしょうか。
A:当事者間で親権者を決めることができず、裁判所が親権者を指定する場合、裁判所は子の利益を最優先として総合的に判断します。主な判断基準は次の通りです。
(1)監護態勢の優劣
それぞれの年齢、健康状態、経済状況(資産、収入、借金の有無・程度など)、就労状況(職務の内容、勤務時間など)、居住環境、教育環境、親族の援助の有無・程度等により、どちらの監護態勢が優れているかをみます。
(2)母性優先の原則
子が乳幼児の場合は母親の存在が情緒的成熟のために不可欠とされることがあります。最近は生物学上の母親ではなく母性的な役割を持つ養育者との関係を重視すべきといった考え方もあります。
(3)監護の継続性
別居後、一方の親が子を育てており、監護状況が安定している場合は、現に育てている親が有利となります。親権者が決まっていない段階で他方の親元にいる子を無断で連れ去った場合、適格性に疑問を持たれ、監護状況が安定していても評価されないことがあります。
(4)面会交流の許容
元妻や元夫も子の親であることを尊重し、その存在を子に肯定的に伝えることができるかどうかも、親権者の適格性を判断する上で考慮されます。
(5)子の意思
子に意思を表明する能力がある場合(おおむね10歳以上)、子の意思も考慮されます。本件の場合はまだ4歳ですから、子が意思を表明したとしてもあまり重視されないでしょう。
(6)きょうだいの不分離
子が乳幼児の場合、兄弟姉妹と生活を共にすることによって得る経験は人格を形成する上で価値があるとされ、兄弟姉妹はできるだけ分離すべきではないとされています。
以上のとおりですので、本件の場合、夫が親権者に指定されるためには上記の基準のうち特に(1)、(3)、(4)に力を入れる必要があるでしょう。