賃貸住宅でのペット無断飼育-騒音や損傷などで契約解除も 神戸新聞 2012年7月17日掲載
Q:先日、賃貸マンションの大家から「賃貸借契約を解除すると告げられました。禁じられているペットの無断飼育が理由ですが、このマンションでは多くの人がペットを飼っており、大家も黙認していました。退去しなければならないのでしょうか。
A:集合住宅で犬や猫などのペットを飼育すると、騒音や悪臭が近隣住民に迷惑となる可能性があります。そのため、多くの賃貸マンションでは、賃借人がペットを飼うことを禁止する特約が定められています。そして、裁判所も従来このような特約が有効であることを認めています。
今回相談があった賃貸マンションに、ペットの飼育を禁止する特約が定められていたとすれば、賃借人は直ちに賃貸借契約を解除されてしまうのでしょうか。
賃借人にとって、不動産の賃貸借契約は、生活の拠点となる重要な契約です。そして、ささいな契約違反を理由に契約が解除されるとすれば、安心して賃貸住宅で生活していくことはできません。
逆に、長期にわたって賃料を支払わないなど、重大な契約違反があった賃借人との契約を解除できないとすると、賃貸人の側が回復できない損害を負いかねません。
そのため、裁判所は賃借人の契約違反が、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊する程度に至った場合に、賃貸借契約の解除を認めるという立場を取って、両者の利益を調整しています。
今回の事案では、大家さんがこれまで他の賃借人のペット飼育を黙認していたという事情がありますので、相談者が新たにペットを飼ったとしても、それだけでは相互の信頼関係が破壊されたとはいえないと思われます。したがって、今回の事案では、大家さんの契約解除は認められない可能性があります。
これに対し、ペットによる騒音や悪臭で他の居住者に被害を与えた場合や、室内でペットを飼育して建物をひどく損傷したような事情がある場合は、賃借人の契約違反は重大で、相互の信頼関係を破壊する程度に至っているといえます。このような事情があれば、契約解除が認められる可能性が高くなります。