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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2012年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

漏水被害-管理組合に損害賠償請求を 神戸新聞 2012年10月2日掲載

執筆者:安村 友宏弁護士

Q:自宅マンションが漏水被害にあいました。上階にある配水管の老朽化が原因のようです。私はマンションの管理組合、上階の所有者(住人)のどちらに賠償を求めればよいでしょうか。

A:建物の設置または保存に瑕疵(かし)(物が通常あるべき性質、性能を備えていないこと)があった場合、建物の所有者は瑕疵が原因で被害を受けた人にお金を支払う必要があります。支払額は被害を受けた人の損害額です。これを損害賠償責任と言います。
 配水管の老朽化が原因で、マンションの上階からの漏水被害を受けた場合、建物の設置または保存に瑕疵があるので、被害者は建物の所有者に対して、損害賠償を求めることができます。マンションでは、一戸ごとに所有者がいるので、各戸内で設置または保存に瑕疵があった場合、その各部屋の所有者が責任を負いますが、共用部分については管理組合が責任を負います。
 では配水管の所有者は誰なのでしょうか。マンションの配水管は全体がつながっていることを考えると、誰か特定の人だけが所有するとは言えないようにも思えます。また、配水管が全体の水を通す管(本管)と、各戸に枝分かれしている管(枝管)に分かれているときには、各戸の所有者が枝管の所有者であるとも思えます。
 これについて、最高裁判所は、2000年3月の判決で配水管の構造によって区別する判断をしました。最高裁は、配水が枝管を通じて本管に流れる構造になっている場合、各戸の所有者が枝管の点検や修理を行うことができる場合には、その枝管については専有部分として各戸の所有者が責任を負い、それ以外の場合は、共有部分として管理組合が責任を負うと示しました。
 したがって、各戸の所有者が点検、修理することができるような構造の枝管の老朽化が原因のときは、各戸の所有者に賠償を求めれば良いし、それ以外の場合には管理組合に求めれば良いということになります。
 したがって、各戸の所有者点検・修理出来るような構造で枝管の老朽が原因ならば各戸の所有者に、それ以外ならば管理組合に求めればよいということになります。
 ただ、どこの配水管が漏水の原因になっているのかを被害者が知ることは容易ではありません。このような場合に備え、建物の区分所有などに関する法律は、建物の設置または保存に瑕疵ある場合、その瑕疵は共用部分の瑕疵であると推定する規定を置いています(第9条)。
  つまり、どこの配水管が原因で漏水しているのかわからないときでも、取りあえず管理組合に請求することができます。強要部分の瑕疵ではないと管理組合が証明しない限り、責任を負うことになります。