アーカイブス

このページは旧サイトに掲載されていた記事のアーカイブです。

くらしの法律相談(2008年-2016年)

HOME > くらしの法律相談(2008年-2016年) > 2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 医療過誤の疑い-証拠を集めて十分に分析を 神戸新聞 2013年4月2日掲載

2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

医療過誤の疑い-証拠を集めて十分に分析を 神戸新聞 2013年4月2日掲載

執筆者:桑原 至弁護士

Q:父が手術中に死亡しました。医師から説明を受けましたが、納得できない部分があります。原因は裁判で明らかにするしかないのでしょうか。

A:医療過誤事件では、医療機関が重要な証拠の多くを保持するのに対し、患者側はその内容が分からず、手持ちの資料も乏しいというのが一般的です。そのような状況でやみくもに裁判を起こすのは得策ではありません。必要な証拠を集めて医学的知見から十分に分析することが必要不可欠です。
 今回のようなケースでは、解剖によって死因を明らかにすることが重要です。死因に疑問があるときは、医療機関に患者の解剖を求めるべきです。ただし、解剖結果が必ずしも遺族に報告されるとは限りませんので、解剖を担当した医師に面談して、その内容を詳しく説明してもらったり、解剖所見に関する書面の交付を求めたりする必要があります。場合によっては弁護士会を通じた照会(弁護士会照会制度)も考慮すべきでしょう。
 ほかにも、診療記録(カルテなど)が重要な資料となりますので、医療機関に対し、その写しの開示を請求すべきです。入手した診療記録を、医師の協力を得るなどして分析することによって、死因が明らかになることがあります。
 ただし、場合によっては医療機関が開示に応じなかったり、診療記録を改ざん、隠匿、廃棄してしまったりすることもあります。これを防止するには、提訴前に証拠保全手続きを取るのが有効です。この手続きは、裁判所が医療機関に赴いて、医療機関が保管している診療記録や書類などの提示を求めて確認し、コピーを取ったり写真を撮影したりして、これらを添付した調書を作成し、証拠を保全するものです。医療機関は、直前(通常1~2時間前)まで裁判所が証拠保全に訪れることが分かりません。医療機関にとって不意打ちとなり、効果的です。
 いずれにせよ、裁判を起こす前に証拠を集めることが重要です。個人での対応が難しいようであれば、弁護士にご相談下さい。