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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

「非嫡出子」の相続-民法に「嫡出子」の半分と規定 神戸新聞 2013年9月3日掲載

執筆者:松田 康生弁護士

Q:父の相続人は私を含めた父の子3人です。ただ、私以外の2人は父が結婚していた女性との子ですが、私の母と父は結婚していませんでした。相続については、私は他の兄弟より不利に扱われるのでしょうか。

A:親子関係について、一般的に婚姻関係にある夫婦から生まれた子は「嫡出子」、婚姻関係にない夫婦から生まれた子は「非嫡出子」と呼ばれています。今回のケースでは、相談者が非嫡出子、他の兄弟2人が嫡出子となります。
 相続について法律上、子が数人ある場合は等分するのが原則です。しかし、嫡出子と非嫡出子との扱いは区別されており、民法900条4号には非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とすると規定されています。今回のケースでは、お父さまの遺産を3等分するのではなく、相談者は5分の1、他の2人は5分の2ずつ取得することになります。
 これは一見不平等なように思えますが、なぜ民法にこの規定があるのでしょうか。この規定は、明治時代の旧民法からあったもので、法律婚を重視する考え方が根本にあるとされています。
 しかし、結婚や家族に対する考え方は時代とともに変化していくもので、夫婦として共同生活を営んでいても、婚姻届を提出しない人も増えてきています。非嫡出子自身には何ら責任はないのに、非嫡出子の相続分を嫡出子の半分にするのは問題があるようにも思えます。
 このため、民法900条4号の規定が法の下の平等を定めた憲法14条に反し、違憲ではないかとして裁判の場でも争われてきました。
 最高裁判所はこれまで、民法900条4号の規定について、嫡出子と非嫡出子との区別にも合理的な理由が認められるとして違憲ではないと判断してきました。ところが今年7月、民法900条4号の違憲性を争った裁判で、大法廷での弁論が開かれました。大法廷とは、最高裁の裁判官全員が集まって審理をするところで、判例を変更するか検討するときなど特別な場合に審理されます。
 この裁判で違憲判断が出るのではないかと注目されています。明日9月4日に裁判所の判断が示される予定です。
※なお、2013年9月4日最高裁において、同条項は法の下の平等を定めた憲法に違反し無効との判断がなされました。