夫が会社の金を横領-自首、被害弁済が重要 神戸新聞 2014年1月21日掲載
Q:夫が会社のお金を横領していました。まだ、会社では発覚していませんが、いずれ分かるでしょう。夫の罪を軽くするには、どうしたらよいでしょうか。
A:相談のご主人の罪は、刑法253条の業務上横領罪が成立すると思われます。この法定刑は、10年以下の懲役です。
ご主人の罪を軽くするためには、まず、自首という方法があります。刑法42条には、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と規定されています。
自首は、犯人が捜査機関に対し、自発的に自己の犯罪事実を申告することをいいます。ここで注意が必要なのが「発覚する前」とは、犯罪事実が捜査機関に知られていない場合か、犯罪事実は知られていても、その犯人が誰か分かっていない場合を含みます。
犯人を指名手配しているような場合は、警察が犯罪や犯人を把握しているが、犯人の所在をつかめていないだけなので、「発覚する前」に当たらず、自首は成立しません。
相談のケースは、ご主人の横領は会社には発覚しておらず、警察にも知られていないと思われます。この場合、ご主人が自ら警察に横領の事実を申告すれば、自首が成立し、減軽される可能性があります。
次に、罪を軽くするには、被害を弁償し示談(当事者間での解決)をする方法があります。
業務上横領罪は財産犯といって、他人の財産を侵害する犯罪なので、被害弁済をすることが一番の刑を減軽する材料になります。その上で、会社との話し合いにより、ご主人の横領を許してもらって示談することが重要です。
たとえ、ご主人が横領した損害額を全て賄えなくても、損害の一部だけでも被害弁済をしておくことにより刑が減軽される可能性は高くなります。この被害弁済により、会社がご主人に対し民事上、損害賠償請求するのを防ぐことにもなります。