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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2016年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

DNA鑑定で「他人の子」離婚後の養育費は-長年の親子関係、支払い必要 神戸新聞 2016年12月21日掲載

執筆者:三枝 由季弁護士

Q:私には10歳の子どもがいます。DNA鑑定をしたところ、自分の子どもでないと判断されたため、離婚することになりました。私は、子どもの養育費を支払わないといけないのでしょうか?

A:両親は子の扶養義務があるため、離婚後も、双方が経済力に応じて子の「養育費」を分担する義務があります。
親子関係について、生物学上、母子関係は分娩の事実から明らかですが、父子関係は必ずしも明らかになりません。民法上、婚姻中または離婚後300日以内に生まれた子は、嫡出子(夫婦の子)と推定するものとし、この推定を争うには、子の出生後1年以内に、父親から「嫡出否認」の裁判手続きを取らなければなりません。
ただし、判例上、婚姻中に生まれた子であっても、夫が別居、長期海外出張、受刑中などで、妻が夫の子を妊娠することが不可能な場合は、例外的に「親子関係不存在確認」の裁判手続きにより争うことができます。
事例は婚姻中に生まれたお子さんなので、嫡出推定が及びます。生まれて1年以内であれば、DNA鑑定の結果を根拠として、嫡出否認の手続きを取ることができますが、既に10歳なので、この方法は取り得ません。
また、親子関係不存在確認の裁判手続きについても、残念ながら、最高裁判所は否定しています。不存在確認の裁判手続きはいつでも、誰からでも、制限なく取ることができるため、子を扶養する人がいなくなってしまい、子が不安定な状況に置かれるからだとしています。
相談者がDNA鑑定をするに至った事情は分かりませんが、たまたま、鑑定してみたら親子でなかったからといって、それまで存在すると信じていた親子の関係をなかったことにするのは、子にとって酷ともいえます。ただし、最高裁の中には反対意見もあり、今後、結論が変わる可能性は大いにあります。
あなたとお子さんの親子関係を否定することはできませんので、お子さんに対して養育費を支払わなければなりません。ただし、養育費の額が決まった後、元妻(母親)の再婚や養子縁組といった事情変更が生じた場合に、養育費の減額について話し合うという手段は残されています。