私たちは、2021年4月12日、「コロナ禍におけるありとあらゆる差別偏見を許さない会長声明」を発出し、県政記者クラブにおいて、一緒に取り組みを続けている兵庫県の方々と共に会見を行いました。
一緒に考えていただきたいと思います。ぜひ、ご一読ください。
2021年(令和3年)4月12日
兵庫県弁護士会
会 長 津 久 井 進
1 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大によるパンデミックから既に1年以上が経過しました。変異株の感染拡大による第4波の影響から、兵庫県ではまん延防止等重点措置がとられており、現時点においても収束の目途は立っていません。このコロナ禍は、私たちにとって災害にほかなりません。現在の状況は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(憲法前文)を脅かしており、人権に関わる問題でもあります。この危機を乗り越えようと団結し、必死の努力を続けておられる医療関係者、保健所等の行政関係者、ワクチン開発を行う事業者のみなさまの献身的活動に、兵庫県弁護士会を代表し、心から感謝を申し上げます。
2 他方で、残念なことではありますが、これまで、全国各地で、新型コロナウイルスの感染者や医療関係者の方々に対する誹謗中傷や、感染者が確認された施設等に対する非難、医療関係者等の子どもの通園通学の拒否、感染者のプライバシー侵害やこうした行為を誘発する言動などの差別や偏見が、様々な手段や方法によって生じ続けています。こうした差別偏見は、日本国憲法が基本的人権の尊重を基本原則とし、個人の尊厳、自由及び人格権(13条)並びに法の下の平等(14条)を保障していることからすれば、感染者やその家族等の人格や尊厳を侵すものとして決して許されるものではありません。新型コロナウイルスによる現在の状況は、今まで誰も経験したことがないものであり、感染の経路などが目に見えないこともあって、みんなが同じように不安になり、これまでの生活や仕事の制約が続くことによるストレス等もまた、みんなが同じように感じているところです。しかし、感染者は、病気に罹った患者です。決して「悪」ではありません。また、医療関係者の方々は、私たちにとって尊敬する対象ではあっても、差別偏見の対象にする理由など全くありません。 一度受けた差別偏見の被害というものは、容易に回復することができません。そして、一人ひとりの差別や偏見であっても、それが同調圧力となって、更なる差別偏見を招くこととなり、被害者を苦しめ続け、助けを求める声を上げにくくさせるのです。
3 感染症法の前文には、我が国で、過去にハンセン病患者等に対して、「いわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」と定められています。ところが、今年の2月3日、感染者に対し、一定の場合に「過料」という行政罰を科す法改正がされました。私たちは、この法改正が新型コロナウイルスの感染者に対する差別偏見を加速させることにつながるのではないかと大変心配しています。兵庫県下の自治体では、新型コロナウイルスに関する差別偏見を禁止し、防止する条例を制定するところが出てきていますが、私たちは、このような動きが拡がっていくことを強く期待しています。
4 私たち弁護士には、法律相談をはじめ、あらゆる手段を通じて、コロナ禍における差別偏見をはじめ、みなさんの人権を脅かすものを防ぎ、被害に遭われたみなさんの救済に努める責務があります。私たちは、その責務を全うするため、兵庫県等の協力を得ながら、これまで新型コロナウイルスに関する無料電話法律相談を続けてきました。今後も、基本的人権の擁護と社会正義の実現をその使命とする弁護士として、私たちは、日本弁護士連合会をはじめ、兵庫県及び県内市町等と連携しながら、ありとあらゆる差別偏見が許されないことを発信し続け、これからも差別偏見を防止する活動を続けていく決意をここに表明します。
以上