2021年(令和3年)7月26日
兵庫県弁護士会
会 長 津 久 井 進
第1 声明の趣旨
当会は、司法試験委員会に対し、2021年(令和3年)司法試験において、1500人程度という人数を前提にすることなく、厳正な合否判定がなされることを求める。
第2 声明の理由
- 2021年(令和3年)司法試験の受験者数は、3424人(2020年(令和2年)は3703人)であり、2011年(平成23年)の8765人から減少傾向が続いている
他方、合格者数は、2020年(令和2年)は1450人となっており、1500人程度は輩出されるようとした2015年(平成27年)6月の政府決定後初めて1500人を下回っており、この点は評価される。しかしながら、以下の状況からすると、合格判定が緩まっていないか疑義が持たれるところである。 - 近年の司法試験の状況は、以下のとおりである。
実施年 合格率(予備試験合格者の合格率) 合格者数 受験者数 平成28年 22.95%(59.49%) 1583 人 6899 人 平成29年 25.86%(70.03%) 1543 人 5967 人 平成30年 29.11%(76.02%) 1523 人 5238 人 令和元年 33.63%(80.15%) 1502 人 4466 人 令和2年 39.16%(87.10%) 1450 人 3703 人
上記のとおり、受験者数の減少も相俟って合格率の上昇が顕著である。
他方、2020年(令和2年)、昨年の司法試験では総合点での平均点以下の者が合格している上に、特に昨年の司法試験では、総合点の平均点が807.56点であるのに対し、合格点が780点に止まっている。 - そもそも、司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験であり(司法試験法1条1項)、社会的弱者の人権擁護や法の支配を目的とする司法を担う者を選抜するという事柄の性質上、厳正な合否判定が求められる。
2015年(平成27年)の政府決定にも、1500人程度という目標は、「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでない」ことが明示さ れている。
合格者数を確保するために合格判定を緩めるとなれば、他の年度で受験した受験生との間に不公平を生じかねない。
合格後の司法修習においては、司法修習生間での法律の習熟度の差が広がり、担当教官が基本概念を理解させることに時間を取られるなど、司法修習の運営にも支障を来しかねない。
司法修習修了後、法曹となった者は、直ぐに実務に就くのであるから、実務で必要な法律知識の習得が未熟であるとなれば、適切な事件処理もままならなくなる。 - 当会は、2017年(平成29年)以降、毎年、司法試験の合格判定に関する会長声明を発出しているところである。
にもかかわらず、近時の司法試験において、総合点での平均点を下回る者が合格する結果になったことは、誠に遺憾である。
当会は、司法試験委員会に対し、2021年(令和3年)司法試験の合否判定においても、1500人程度という人数を前提にすることなく、厳正な合否判定がなされることを求める。
以上