取調べの可視化について
取調べの可視化とは、取調べの全過程を録画することです。取調べの状況を検証することができるようにするとともに、可視化することによって違法・不当な取調べを防止することを目的とするものです。
わが国でも、多くの事件の取調べは、「密室」で行われます。この密室での取調べで、捜査官による暴行・脅迫・利益誘導などが行われ、しばしば、いわゆる「虚偽の自白」がなされるのです。その結果、えん罪事件が発生し、取り返しのつかないえん罪被害が生じるのです。
取調べの可視化は、取調べの密室性を排除し、取調べをオープンにすることで違法・不当な取調べを防止し、えん罪による人権侵害をなくし、裁判での無用の争いをなくそうというものです。
近時、刑事訴訟法の改正により、裁判員裁判対象事件など、一部の事件について、取調べの可視化が実現することとなりました。しかしながら、これによって可視化が義務付けられた事件は、全体の2パーセント程度とされ、依然、圧倒的に多くの事件では可視化の義務付けはなされていません。
兵庫県弁護士会は、全事件に取調べの可視化を広げ、真の「取調べの可視化」の実現のための活動を行っています。
活動の内容
(1) 市民のみなさまへのアピール
兵庫県弁護士会では、取調べの可視化の必要性を市民の皆さまにご理解いただくため、著名なえん罪事件被害者の方などをお招きし、シンポジウムを開催しています。興味がおありの方は是非ともご参加ください。
これまでのシンポジウム実施状況についてはこちら
(2) 可視化出前講座
取調べの可視化について「出前講座」として無料の弁護士講師派遣を行っておりますので、講演会・学習会などの企画の際にはご利用をご検討ください。詳しくは、添付の「無料講師派遣のご案内」(PDFファイルへリンク)をご覧ください。
(3) 県議会への意見書採択運動
兵庫県の全ての市町議会(PDFファイルへリンク)において「取調べの可視化を求める意見書」が採択されています(全国で唯一です)。しかしながら、兵庫県議会においては、未だ意見書が採択されていません。兵庫県弁護士会は、兵庫県議会にも意見書を採択していただけるよう、鋭意活動中です。
(4) 可視化実践弁護
我々弁護士自身が、日ごろの弁護実践の中で被疑者、被告人の防禦権を全うすると共に、取調べの可視化を実現するべき弁護活動を実践して行きます。具体的には、「可視化申入書」の利用や、「被疑者ノート」の活用などです。
今こそ取調べの可視化を
取調べの可視化は、今や世界の潮流です。アメリカの多くの州、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、香港、台湾、韓国などでは(完全ではない国もありますが)取調べの可視化が実現しています。わが国では、取調べの可視化が義務付けられた事件は全体の2パーセント程度にすぎず、わが国は、取調べの可視化という点では、非常に遅れているといえます。捜査機関は、取調べの可視化は捜査に支障を来すことになるなどと言って取調べの可視化には消極的な態度を取り続けています。しかしながら、取調べの可視化が実現した国では、捜査に支障が出ておらず、むしろ、捜査官は可視化したことを肯定的に受け止めています(一度、取調べの可視化を実現し、後にやめたという国は一つもありません)。事実、すでにわが国でも一部の事件で取調べの全過程の録画が行われていますが、支障が生じたという報告はありません。わが国も、世界の潮流に合わせて、全事件で取調べの可視化を実現しなくてなりません。
一部の事件に限ってでも取調べの可視化が実現したことで、わが国も真の取調べの可視化の実現への大きな一歩を踏み出しました。しかし、ここで歩みを止めてはなりません。全事件での取調べの可視化が実現するまで、当会は努力と行動を重ねていきます。
市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。